「格安SIM」「格安スマホ」という言葉はすっかり定着し、聞いたことがないという人の方が少ないだろう。最近ではテレビCMも頻繁に目にするようになった。

ところが、まだまだ格安SIM利用者は、三大キャリアの利用者を上回っていないのが現状だ。

MMD研究所が行った「2016年9月格安SIMサービスの利用動向調査」によれば、15歳~69歳の男女35,161人を対象に2016年9月26日~10月3日の期間で格安SIM利用者は14.7%にとどまっている。(引用元:MMD研究所HP

では、なぜ格安SIMサービスは日本でそれほど普及しないのだろうか。

 

目次

格安SIM業者とは

格安SIM業者とは、一言で言えば「大手キャリアの通信網を借りて」サービスを提供している業者である。

現在日本の携帯キャリアは、docomo、au、SoftBankの三つ巴体制である。それらのキャリアは、すでに全国にインフラ設備(通信網)を整えており、新たに携帯業界に参入する企業にとっては、設備費用が膨大になるため参入の障壁となっていた。

しかし、通信回線を本家のキャリアよりも「低速」や「制限」などの条件付きで「借りる」ことで、設備費用をかけずに携帯業界に参入できるようになった。それが格安SIM、格安スマホであり「MVNO(Mobile Virtual Network Operator)」と呼ばれている。

これにより、たとえ条件付きでも価格を安く提供できることがMVNOの最大の「ウリ」である。大手キャリアの3〜4分の1程度の価格帯でサービスを利用できるが、先ほど紹介したデータを見ると、利用者は10人におよそ1.5人ということになる。

 

格安SIMは国民性になじまないのか

日本人は得てして、「安心・安全」を好む傾向がある。加えて、「安いものは低品質」という、固定概念を持っている人も多いようだ。

たしかに、大手キャリアに比べれば速度面などでの劣る点はある。しかし、価格の差はかなりの金額になる。この事実は、価格だけではない要素があることを示唆していると言える。

1.サポート体制への不安

格安SIM利用者が増えない理由の一つに、実店舗の少なさがある。

大手キャリアは、全国どこにでも「〜〜ショップ」があり、気軽にスマホについての相談ができる。

一方、MVNO業者は低価格でサービスを提供しているため、そうした対面サービスを行っていることは少ない。最近では、電話でのサポート体制や、店舗での対応も可能な業者も増えているが、まだまだ十分とは言えず、認知度も低いのが実態だ。

何かあった時にすぐになんとかしてくれるという安心感は、大手キャリアに軍配があがるだろう。

2.SIMの差し替えが必要

それに加え、「自分でSIMカードを差し替える」ということに不安を持っている層もいる。一度やってみればなんということのない作業だが、機器の扱いに不慣れな人にとっては抵抗があるのだろう。

「使える機種と使えない機種の基準」「SIMロック」なども煩雑さの要因の一つかもしれない。

人間の「怖い」という感情は、そのものへの無知が原因とも言われている。まずは知るという作業により、その怖さの解消につながるのだ。格安simで言えば、上述した知識のなさ、不慣れな作業に対する怖さ、そもそも「知ることへの面倒くささ」が原因とも言える。

価格かサービスか

MVNOの参入により、価格面での市場競争が始まっている。大手キャリアは、価格ではなく「サービス」を重視した差別化を行っている。つまり、通信業者を選ぶ基準が、価格を取るかサービスを買うかという時代に突入したということだ。

日本人は「おもてなし」を重視する。その点で言えば、大手キャリアのサービスが人気なのもうなずける。外国をみれば「当たり前」のことでも、日本においては格安SIM業者が大手キャリアの利用者を上回るのには、まだまだ時間がかかりそうだ。

我々にとっては、格安sim業者の進出することで「選択肢」が増えたことは、喜ばしいことである。その先は、個人の価値観次第だ。

私も格安simを利用するようになってから、1年以上が経過した。

通信部分での不満は全くないとは言えないが、大幅に通信料を削減できたことの満足度の方が上回っている。スマホの料金が家計を圧迫しているという方は、格安simを検討してみてはどうだろうか。「まずは知ること」から始めていただきたい。

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